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色の表示方法(JIS) 色名・マンセル表色系・XYZ表色系

色の表示方法には、色名による表示、三属性による表示、光の混色原理に基づく表示の3種類あります。色名は、色を言葉によって呼び表すもので、表色系(カラーシステム)は、数値や記号によって色を表示する体系であり、色の三属性に基づく顕色系と、光の混色原理に基づく混色系があります。

色名、顕色系、混色系の順に、色の表示精度(分類数)が高いです。
色名や表色系に対応したカラーチャートによって構成される色票集があり、色味を見て確認や比較をすることもできます。

JIS(日本産業規格)においても、色名による表示、三属性による表示(マンセル表色系)、光の混色原理に基づく表示(XYZ表色系)が定められています。
仕事として色を扱う場合、色の記録、伝達、設計、再現が必要となります。
3つの色の表示方法は、色を扱う上での三種の神器のようなもので、目的に応じて使い分けることで、色の分析や配色、高い精度での色の伝達・管理が可能となります。
ここでは、それぞれの色の表示方法について、解説します。

【目次・色の表示方法(JIS)】

色名

JISでは、色名として、基本色名、系統色名、慣用色名が採用されています。
「物体色の色名(JISZ8102:2001)」で定められており、これに準拠する色票集「JIS色名帳」が作成されています。
また、光源色の色名については、「色の表示方法-光源色の色名(JISZ8110:1995)」で定められています。
色名は、以下のような用途で利用されます。

  • 大まかな色の測定、記録、伝達
  • 色選定や配色で用いるカラーチャート

関連記事:「色名の種類 基本色彩語・固有色名・系統色名」

基本色名

基本色名は、主要色相5種「赤(R)・黄(Y)、緑(G)・青(B)・紫(P)」と、これらの中間色相5種「黄赤(YR, O)・黄緑(GY)・青緑(BG)・青紫(PB, V)・赤紫(RP)」の計10種の有彩色と、無彩色3種「白(Wt)・灰色(Gy)・黒(Bk)」の計13種が定められています。

系統色名

系統色名は、基本色名に色相や色調(明度・彩度)に関する修飾語を添えて系統的に表示する形式であり、色を350種に分類することができます。
有彩色の色相に関する修飾語は、「赤みの(r)・黄みの(y)・緑みの(g)・青みの(b)・紫みの(p)」の5種が定められています。基本色名と色相に関する修飾語の組み合わせにより、20色相に細分化することができます。例えば、紫みの赤(pR)といった表記になります。

有彩色の色調(トーン)に関する修飾語は、「あざやかな(vv)・明るい(lt)・つよい(st)・こい(dp)・うすい(pl)・やわらかい(sf)・くすんだ(dl)・暗い(dk)・ごくうすい(vp)・明るい灰みの(lg)・灰みの(mg)・暗い灰みの(dg)・ごく暗い(vd)」の13種が定められています。例えば、あざやかな紫みの赤(vv-pR)や明るい灰みの紫みを帯びた赤(lg-pR)といった表記になります。

無彩色の明度に関する修飾語は、「うすい(pl)・明るい(lt)・中位の(md)・暗い(dk)」の4種が定められています。例えば、明るい灰色(ltGy)といった表記になります。

無彩色の色相に関する修飾語は、基本色相に対応する「赤みの(r)・黄赤みの(yr, o)・黄みの(y)・黄緑みの(yg)・緑みの(g)・青緑みの(bg)・青みの(b)・青紫みの(pb, v)・紫みの(p)・赤紫みの(rp)」の10種と、「紫みを帯びた赤みの(p・r)・黄みを帯びた赤みの(y・r)・赤みを帯びた黄みの(r・y)・緑みを帯びた黄みの(g・y)」の4種を合わせた計14種が定められています。例えば、紫みを帯びた赤みの明るい灰色(p・r-ltGy)といった表記になります。

慣用色名

慣用色名は、基本色彩語と、日本で慣れ親しまれている代表的な固有色名から269種(和色名:147種、外来色名:122種)が定められています。
それぞれの慣用色名には、系統色名と三属性の表示値(マンセル表記)が示されています。


マンセル表色系(顕色系)

JISでは、三属性による表示方法(顕色系)として、マンセル表色系を採用しています。
「色の表示方法-三属性による表示(JISZ8721:1993)」で定められており、これに準拠する色票集「JIS標準色票」が作成されています。
マンセル表色系は、色の三属性である色相(Hue)、明度(Value)、彩度(Chroma)によって、色を表示します。
マンセル表色系の三属性は、知覚的等歩度となるよう尺度化されており、見た目で均等となっています。
マンセル表色系は、以下のような用途で利用されます。

  • 精度の高い色の測定、記録、伝達、管理
  • 色選定や配色で用いるカラーチャート

色相(Hue)

色相(Hue:ヒュー)は、有彩色が持つ色味の尺度です。主要色相5種「赤(R)・黄(Y)、緑(G)・青(B)・紫(P)」と、これらの中間色相5種「黄赤(YR)・黄緑(GY)・青緑(BG)・青紫(PB)・赤紫(RP)」の基本10色相をベースとします。基本10色相を10等分することで、100色相が定められており、5の数値の色が基本10色相の代表色相となります。

明度(Value)

明度(Value:バリュー)は、色の明るさの尺度です。黒で0、白で10とし、灰色は段階的にその間の数値となります。有彩色では、同じ明るさを持つ無彩色の明度をとります。

彩度(Chroma)

彩度(Chroma:クロマ)は、色の鮮やかさ(色味の強さ)の尺度です。無彩色で0とし、鮮やかさが増すほど数値が大きくなります。最高彩度値は顔料の発色によるため、色相によって異なります。

マンセル表記

マンセル表色系による色の表示は、三属性の表示値(マンセル値)を、色相(H)・明度(V)・彩度(C)の順で連記した[HV/C]の形式で表され、マンセル表記と呼ばれます。
例えば、レッド(あざやかな赤)の場合、色相が5R、明度が5、彩度が14であるため、[5R 4/14]という表記になり、「5アール、4の14」と読みます。
無彩色は、色相と彩度がないため、明度(V)の前に、無彩色(neutral color)を表すNを添えた[NV]という表記で表されます。
例えば、シルバーグレイ(明るい灰色)の場合、明度が6.5であるため、[N6.5]という表記になります。

色立体

マンセル表色系は、三属性によって色立体を構成し、三次元空間に全ての物体色を系統的に配列することができます。
マンセル表色系の色立体は、中心軸に明度、円周方向に色相、半径方向に彩度をとった、コマのような形状で表します。
中心軸は無彩色の白・灰色・黒が配列され、中心軸から離れるほど彩度が高くなるよう、有彩色が配列されます。
色相は、色相環を構成するように配列されます。マンセルが考案した初期の表色系では、色相環の対向色は補色の関係(減法混色により無彩色となる)でしたが、JISで採用されている修正マンセル表色系では、知覚的に等間隔となることを優先しているため、必ずしも補色の関係は成り立ちません。
色立体の中心軸を通る鉛直断面は、等色相断面となり、カラーチャートとして活用されます。


XYZ表色系(混色系)

JISでは、光の混色原理に基づく表示方法(混色系)として、XYZ表色系(CIE表色系)を採用しています。
「測色-第3部:CIE三刺激値(JISZ8781-3:2016)」で定められています。
XYZ表色系は、以下のような用途で利用されます。

  • 最も精度の高い色の測定、記録、伝達、管理

XYZ表色系は、光の混色原理に基づくCIE三刺激値(X、Y、Z)によって、色を表示します。
XYZ表色系は、CIE(国際照明委員会)によって制定された国際的な表示方法です。
マンセル表色系より、色の表示精度が高いため、厳密な色彩管理をする際に利用されます。


まとめ

JISで定められている色の表示方法について解説しました。
JISでは、色名、マンセル表色系、XYZ表色系が規定されています。
色分類の特徴や表示精度が異なるため、色を扱う目的や産業分野によって使い分けられます。