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色名の種類 基本色彩語・固有色名・系統色名

色名(しきめい)とは、ある特定の色や、同じ性質を持つ色の範囲を言葉によって呼称するものです。数値や記号で色を表示する表色系と異なり、直感的な分かりやすさや情緒的な意味を持つのが特徴です。色名には、基本色彩語、固有色名、系統色名があります。

「物体色の色名(JISZ8102:2001)」においては、基本色名、系統色名、慣用色名が定められています。

関連記事:「色の表示方法(JIS) 色名・マンセル表色系・XYZ表色系」

ここでは、それぞれの色名の特徴や役割について、解説します。

【目次・色名の種類】

基本色彩語

基本色彩語(basic color terms)とは、言語を超えて共通する普遍的な色名です。
有彩色8種「赤・黄・緑・青・紫・桃・橙・茶」と無彩色3種「白・灰・黒」の計11種が、基本色彩語として定義されています。
基本色彩語は、以下のような用途で利用されます。

  • 色の見えの測定
  • 系統色名のベースとなる基本色名

基本色彩語は、文化人類学者のブレント・バーリン(Brent Berlin)と言語学者のポール・ケイ(Paul Kay)の研究成果「基本の色彩語-普遍性と進化について(1969)」で報告されました。
色名の数は言語によって異なりますが、どの言語にも色を表すベースの言葉があり、その数は多くないことが知られています。
バーリンとケイは98の言語の色名を調査し、上記11種の色名が共通していることを発見したのです。
これらの色は、どの国の人でも通じる色名であるため、色の見えの測定に利用されています。例えば、見せた色を基本色彩語11種で答えさせる「カテゴリカルカラーネーミング法」や、「赤・黄・緑・青・白・黒」の6種で答えさせる「カラーネーミング法」があります。
また、基本色彩語は、系統色名のベースとなる基本色名にも利用されています。


固有色名

固有色名とは、ある特定の色を事物の色イメージによって表す色名です。
固有色名は、以下のような用途で利用されます。

  • 色イメージに基づく色選定や配色
  • 色彩文化や色材についての学習

固有色名の中で最も身近なものは、桜色や空色などの自然からとった色名で、日常的に使用されています。
一方で、固有色名には、一般にはあまり馴染みがないものもあります。
顔料(朱、群青など)、染料(紅、藍など)、染色名(一斤染、黄櫨染など)といった色材や染めの名称が、色名として定着したものがあります。
また、長い歴史や文化から生まれた伝統色名(重ね色、四十八茶百鼠など)、一時期に流行しその時代を象徴する流行色名(シャーベットカラー、シネマカラーなど)、海外からもたらされ国内でも定着した外来色名(ローズ、バイオレットなど)があります。

固有色名を知ることで、伝統的な色彩文化や、色材についての知識を得ることができます。
また、固有色名は、単なる教養知識だけなく、デザインやクリエイティブに活かすこともできます。
固有色名の意味や由来が、色選定や配色のインスピレーションを与えることがあるでしょう。
例えば、伝統色名や流行色名は、時代性や文化を表現する力を持っています。

JIS「物体色の色名(JISZ8102:2001)」においては、固有色名のうち、日本で慣れ親しまれている色名や産業界で使用されている色名、教育的な価値のある色名が、慣用色名として収録されています。
マンセル表記も示されているため、色味を手軽に確認することができます。


系統色名

系統色名とは、全ての色を系統的に分類し表示する色名です。
基本色名(基本色彩語など)に、色調(トーン)を表す修飾語(明暗、清濁、濃淡、深浅など)や、色相を表す修飾語(赤みの、黄みのなど)を添えて表示します。
系統色名は、以下のような用途で利用されます。

  • 色の測定、記録、伝達
  • 色選定や配色で用いるカラーチャート

系統色名のメリットは、全ての色を体系的に網羅している点と、平易な言葉を用いてシンプルなルールに従って色を表すことができる点です。
網羅性と色を系統的に分類できることから、色彩調査や分析に利用することができます。
また、色の専門知識があまりない人でも、直感的に色の特徴を理解し伝達することができます。
色の三属性がベースとなっているため、色彩理論を理解する入口にもなるでしょう。
系統色名は、色相と色調によって色を体系的に表示するヒューアンドトーンシステムを構築することができるため、トーンに基づいた色彩設計にも利用することができます。

日本の系統色名には、JIS「物体色の色名(JISZ8102:2001)」の系統色名や、JAFCA(日本流行色協会)の「JBCC(JAFCA BASIC COLOR CODE)」、日本色彩研究所の「調査用カラーコード」、「PCCS(Practical Color Coordinate System)」などがあります。 1955年に、ISCC(全米色彩協議会)とNBS(米国国家標準局、現NIST)によって制定された「ISCC―NBS系統色名法」が初の系統色名であり、日本の系統色名の元となっています。
また、業界や企業で独自の系統色名が使用されていることもあります。
JIS「物体色の色名(JISZ8102:2001)」の系統色名については、以下で解説しています。

関連記事:「色の表示方法(JIS) 色名・マンセル表色系・XYZ表色系」


まとめ

色名の種類と特徴について解説しました。
色名には、基本色彩語、固有色名、系統色名があります。
基本色彩語は言語を超えて通じる、固有色名は色イメージによる表現性を持つ、系統色名は色の表示機能に優れている、という特徴があります。
それぞれの特徴を活かす形で、色彩業務に活用されています。